先天性股関節脱臼
原因
出生前後に股関節が外れる疾患で、発生率は約0.1 %です。完全にはずれてしまうと股関節脱臼、はずれかかっていると亜脱臼と言います。
胎児の子宮内での不良肢位や、出生後に外部から強い力が加えられることによりおこります。この他にも、遺伝や寝る時の向き癖や、逆子での出産も原因に考えられます。「先天性」というものの、生まれつきの例は少なく、生後、脱臼・亜脱臼が進行します。
症状
赤ちゃんのうちは痛みを訴えるよりも、左右のバランスの悪さから動きに支障が目立ちます。そして、そのまま成長すると、歩行をはじめとした運動機能が大きく障害されるようになります。また、立位や坐位などの姿勢にも影響を与え、頑固な腰痛の原因にもなります。
年齢とともに進行性で耐えがたい痛みを生じるようになりますので、早期治療が重要です。
治療
3〜4ヶ月健診などで発見されることが多く、発見したら直ぐに治療を開始します。寝る時の向き癖の改善やオムツの当て方などを注意することにより治る事もありますが、改善が見込めない場合は、リーメンビューゲルという簡単な装具をつけて治療します。ほとんどの場合は数ヶ月で治癒しますが、治癒が認められない場合は、もう少し大きくなってから全身麻酔での整復手術を行います。
変形性股関節症
原因
変形性股関節症とは、股関節の形が変形していく病気です。
原因は股関節の形が元々異常であるところから発症、老化による変形などが考えられます。股関節の形が元々異常の場合は、約90%が先天性股関節脱臼や先天性臼蓋形成不全によるものです。
男性より女性のほうが関節が緩く、筋力が弱いため、女性のほうがかかりやすい疾患と言われています。
症状
変形性股関節症は変形の程度によって初期、進行期、末期に分けられます。
初期には脚の付け根や臀部(でんぶ)、膝の上部のこわばりや重い感じがあり、歩き始めや長時間の歩行、階段の昇降で痛みが起こります。腰からのいわゆる坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)や変形性膝関節症に症状が似ている場合があります。初期でも炎症が強く関節液がたまっていたり、関節唇(しん)が損傷されていたりする場合には比較的に強い痛みがあります。
変形が進行し進行期から末期になるにつれ、動きが制限されて痛みも強くなり、筋力も低下してきます。長距離の歩行や階段の昇降、しゃがみ立ちが困難になるなど徐々に日常生活が制限されてきます。
治療
まず、消炎鎮痛剤の服用や筋力トレーニング、体重管理などの保存療法を行いますが、保存療法では痛みが耐え難い、進行を止められないなどの場合は、股関節の状態により、変形性股関節症とされる骨の部分の切り取り術、股関節固定術などを行います。
単純性股関節炎
原因
10歳以下、特に4〜6歳ころの幼児に急に発病します。男の子に多く発病し、稀に、大人にもおこることがあります。 はっきりした原因は分かっていませんが、風邪のあとなどに発病したりします。
症状
突然、股関節が痛くなり、たいてい歩行できないほど痛くなります。
治療
通常2〜3週間で痛みはおさまり、安静にしていると自然に治ります。
特に後遺症などはなく、痛みも残らず何もなかったかのように走ったり出来るようになります。
化膿性股関節炎
原因
化膿性股関節炎とは股関節に細菌が侵入した為におこる炎症で、大人も発症しますが、特に免疫力のすくない乳幼児が多く発症します。発症する細菌は、ブドウ球菌が多いですが、感染経路が特定出来ない場合がほとんどです。
症状
最初は少し股関節を痛がるだけですが、次第に症状が強くなり、発熱を伴い、元気が無くなります。そして、痛みから歩かなくなります。
治療
年齢により適切な治療法が選択されます。赤ちゃんにが発症すると、骨が発育する、成長軟骨という部分への損傷を招くことがありますので、早期に治療を開始することが大変重要です。
弾発股
原因
股関節を動かしたときに音がしたり、ひっかかった感じがある状態の総称を弾発股と呼びます。骨盤の歪んでいたり、身体のバランスが悪いと筋肉が固まってしまい、筋肉についている腱が股関節の出っ張り部分にこすれて炎症が起こり、痛みが誘発されます。
症状
初期は、コツンや、ポキッという音だけで痛みがない場合もありますが、放置すると、股関節の変形や痛みに繋がることもあるので注意が必要です。痛みは炎症により激痛になる場合もあります。
治療
治療方法は、ほとんどの場合、消炎剤鎮痛剤などの服用と患部を安静することで治ります。
安静期間が十分でないと、再び股関節部に炎症が起きて弾発股を再発することもありますので、十分な休養をとることが大切です。